貴方は、奇跡を、信じるだろうか…?
当時の僕は、高校を卒業後すぐに就職した会社を1年と3ヶ月で辞め、ろくに就活やバイトすらもせずに遊び歩いていた。
遊び歩いていた。
とは言ったものの、当時の僕の遊びというのは仲間内で決まった場所に集まって、各々が自由に趣味を楽しむというもので、その内容も身体と道具さえあれば他に必要な出費なども無かったので、無収入ながら貯金がそれなりにあり、実家で両親のスネをかじり尽くした後にダシを取るような生活をしていた僕でも、金銭面で困るようなことは無かった。
「その日」の前日も、いつもの場所で仲間たちと遊んでいると、後輩が飲みかけのコーヒー缶を誤って蹴り倒してしまった。
コンクリの床にみるみると染みていくコーヒー。
いつも使わせてもらってる場所を汚してしまったという罪悪感を感じつつ、まあまた今度きれいにすればいいや!と無かったことにし、時間も遅かったので解散することにした。その時は。
翌日の「その日」、いつものように仲間たちが集まった。
コーヒー缶を蹴り倒した後輩の姿は無かったが、前日にコーヒーがこぼれた場に居合わせた僕と、先輩と、友人の3人が集まった。
みんな、コーヒーがこぼれたことなんて忘れて趣味を楽しんだ後、談笑をしていた。
友人が突然自分の乳首を弄り始めたので笑っていると、不意に前日のコーヒー跡が僕の視界に入ってきた。
やっぱりしっかりシミになっちゃってるなあ…なんて思いながら眺めていると
眼前に唐突にチンコが現れた。
目を疑った。
いや、まさか、そんなはずはない…。
完全にチンコだ。
そんなことあるのか。
こぼれたコーヒーがたまたまチンコの形のシミを作り出すことなんてあるわけがない。いや、あって良いはずがない。
しかし、目の前に映るそれは、紛れもなくチンコである。
すぐさま先輩と友人にそのことを伝えた。
爆笑。爆笑である。
そりゃそうだ。
地面にリアルなチンコがあれば誰だって笑う。僕も、貴方も。
ひとしきり笑った後、このチンコの処遇を如何にするかという話し合いをすることになった。
僕は後世に残すことを提案した。
こんな奇跡、そうそう起こるもんじゃない。
これから先、乗り越えるのが困難な壁に立ち向かわなければならないこともあるだろう。
もしかしたら、どんなに努力したとしても絶望的な状況下に光差す希望が見えないこともあるかもしれない。
しかし、僕は思い出したい。
奇跡がコンクリにチンコを生んだことを。
そして、後の世代にも知っていてほしい。
奇跡は、起こるのだと…。
翌日、先輩がブラシでキレイに消していた。
教育に悪いから、だそうだ。