りきすいの郷(さと)

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あいさつ運動

中学時代、俺は生徒会に所属していた。

陽キャ代表のような野球部の男が生徒会長を担い、その下で生徒会執行部として並み居る陽キャ達の中に名を連ねていた。

俺自身は陰キャだったが、陽キャひしめく生徒会選挙に立候補したのには訳がある。

好きな娘の追っかけ

である。

当時好きだった娘が生徒会に立候補すると言っていたので、「俺も自分を変えたくて〜」とかもっともらしい戯言を吐いて生徒会に立候補し、あまつさえ当選してしまった。

それほど活気的な学校ではなかったので、生徒会長の枠ならばともかく、末端の生徒会執行部如きに定員を超える立候補者が集う訳もなく、定型的に立候補者演説を行っただけで、立候補者全当選は予定調和であった。

件の好きな娘も当たり前に当選し、共に生徒会活動を行うことになった。この後俺は振られることになるのだが、それはまた別の話。

 

当初の動機こそ不純ではあったものの、生徒会活動自体は楽しくやりがいもあり、俺にとってはかけがえのない学生時代の思い出の一つとなった。

さまざまな活動を行ってきたが、中でも習慣的に行っていた活動が朝のあいさつ運動である。

朝、他の生徒より一早く登校し校門前で待機。登校してくる生徒を元気な挨拶で出迎えるというものだ。

「おはようございます!」

今にして思えば大したことなどしていないのだが、当時はそういった活動を誇らしく思っていた。自然、モチベーションも高まり、覇気に満ちた挨拶を繰り出して学び舎を共にする生徒たちを出迎えていた。忘れてはならないのは、俺が本来は陰キャであるということ。そんな俺でもこのような活動ができていたのだから、立場が人を変えるというのは本当らしい。

挨拶を大事にするというのが学校の方針でもあったため、あいさつ運動は校外へと舞台を移すこともあった。それが地元の小学校への出張あいさつ運動である。

やることは同じことだが、相手はパワー有り余る小学生共だ。こちらの挨拶に負けじとさらに大きな声で挨拶をぶつけて来る。そうなれば後は意地と意地のぶつかり合いだ。交互に挨拶をぶつけ合い、最終的に12,3人くらいの同時悲鳴挨拶に俺が負ける。女子児童やあいさつ運動に参加している他の女子生徒から若干冷ややかな視線を向けられつつも、俺に勝った小学生たちは満足げな顔で校舎へと向かう。我ながら大人げなくしょうもない争いだが、それもまた気持ちよかったものだ。

 

大人になった俺は、いつしか元気な挨拶を心のどこかで恥ずかしく感じるようになってしまった。そんなことなんてないのに。

忘れてはならない。あの日の元気な挨拶に釣られて皆が元気な挨拶を返してくれたことを。思い出すんだ、あの時の気持ちを。

思い出を胸に、今日も俺は仕事に向かう。そうして元気に挨拶をするんだ。

「おはようございます!」

 

 

 

 

 

 

 

「うるさい」と怒られた。