りきすいの郷(さと)

テキスト系の記事とか、ネタ系の記事とか書きます。

人生の選択

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学生時代、何の部活してた?

っていうのは、社会に出ると死ぬまで付きまとってくる話題である。出会って間もない頃の人間関係を築いて行く上で定型句として広く使い古されていて、社会に出て間もない新社会人がまず出くわすのがこの質問であり、あんまりにも短期間に同じ話題を振られるので発狂して上司や得意先の担当などをまとめて圧力鍋にかける夢を見ることでようやくいっぱしの社会人と認められるというのは、大人はみんな知ってる常識であることだろう。

 

この部活であるが、人気どころとしてやはり運動部は外せないだろう。特に野球部だったとあれば、世の中の野球大好きおじさん達を一気に味方につけることができ、運が良ければ会社内での評価が良くなることさえある。野球、やべえ。

 

かく言う僕は中学生で吹奏楽部に所属し、高校生ではワープロ部に所属していた。社会に出てそろそろ6年ほどになるが、この部活で話が盛り上がったことはあまりない。

それでも、多くの人にとって部活というのは学生時代における青春の象徴であり、部活にまつわる思い出はかけがえのないものとして一生残ることだろう。

しかし、入部する部活をさて選ぼうかという段階では、別にその部活に対して何の思い入れも無い。ミニバスをやってた子がバスケ部に入部するように、なんとなくの流れで部活を決める場合がほとんどであるからだ。

しかも、それがその後の人生を左右する場合もあるので、部活を決める場合には慎重に考えれば良かったなと、大人になって思うものだ。

僕の場合を話したい。

 

 

 

小学6年生の冬休み明け、そろそろ卒業の二文字がチラついてきて周りはソワソワしている。

僕もソワソワしながらなんとなく日々を過ごして、中学生になればモテモテになってしまうのか、困るな〜なんて考えていた。僕には心に決めた人がいると言うのに…。

ある日、6人くらいで下校中のこと。中学に行ったら何部に入るかという話になった。

考えたこともなかった。そうだった、中学生になったら部活をしなくてはいけないのだった。

7つ年上の兄はバスケ部だったな。僕もバスケは好きだし、バスケ部に入ってみようかなと思った。

 

 

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当時、62kgのデブに過ぎなかった僕には無謀な話だったのだが、中学生になると痩せてモテモテになると信じて疑っていなかった為、余裕だろうと思っていた。

そんなことを考えていると、当時僕の好きだった女の子が「すいそうがく部に入ろうと思っとる。向井は?」と言った。初恋だった。

 

俺もその、すいそうがく部に入るぜ!

 

すいそうがく部、水槽学部か。なかなか奇特な部活に入ろうとしてるんだな。どんなことする部活なのかよくわかんないけど、それでも俺は君のこと追っかけるぜ。親父が水槽に色んな熱帯魚とか飼ってるし、色々教えてもらっておけばカッコいいところも見せられるかもしれない…!

後日、授業の一環で中学校を見学しに行った際の部活見学で衝撃の事実を知るのだが、ともかく僕は吹奏楽部に入ることを決めた。

 

そうなると問題は僕の致命的な楽器スキルだ。僕は楽器をしていた経験などは無く、リコーダーも上手に吹けない。

小学6年生の11月頃に行った学習発表会で例の好きな子がアコーディオンの担当になっていたので、追っかけで僕もアコーディオンを担当することになった際、あんまりにも下手で本番数日前になってもまともに演奏できなかった為、音楽の先生から

できるところだけでいいわよ。大丈夫

と励まされるくらいには楽器スキルが低かった。

 

そんな僕が吹奏楽部に入ったところで、あの子にカッコいいところなんて見せられるわけがない。ましてやサックスなんて楽器になってしまった日には2週間で退部するハメになりかねない。そうして家庭科部に入部した後ますますデブに磨きをかけることだろう。そんな未来はイヤだ。

 

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その点、トランペットとかいう楽器は難易度が低そうだ。何せ押すボタンが3つしかない。押さえる穴が8つもあるリコーダーとはえらい違いである。

冷静に考えてみれば、押さえるパターンのバリエーションが8つの楽器でどうして12音階を表現できるのか意味がわからなかったけれど、当時の僕にそこまで考える頭など無かった。

 

さていよいよ小学校も卒業間際という頃になると、僕は毎晩のようにチャレンジの部活特集ページを読み漁り勉強をしていた。

吹奏楽部内のラブロマンスの鉄板はやはり、同じ楽器をやる中でカッコよく吹いてアピールポイントを稼ぐことらしい。そうとなればなんとしてもあの子と同じ楽器を選択せねば…!

 

そうこう考えているといよいよ中学に入学してしまった。さっそく吹奏楽部に参加をすると、もちろんあの子の姿もあった。

どうやら、4月の間は仮入部期間とのことらしく、担当パートは5月に本決まりとなるらしい。なるほど、考える時間は十分にあるわけだ。

問題はあの子が何の楽器を選ぶかだが…。

 

習い事が一緒だったので聞いてみた。

「何の楽器にするの?」

「うーん…トランペットとか良いかな?」

へ、へぇ〜。そうなんだ!

喜びを隠しきれていたかどうかは定かではないが、必死に誤魔化して心の中でガッツポーズを取った。これはもう完璧に勝ちだと確信した。

そうと決まれば僕にトランペットの適性しか無いのだと部に知らしめる必要がある。

適性テストみたいな感じで全ての楽器を体験する機会があったのだけど、トランペット以外の楽器はわざと音を出すことさえできないという演技をすることによって事なきを得た。肝心のトランペットにおいてはマジで全く音を出せないというハプニングに見舞われたが、絶対にトランペットを担当してやるのだという熱意だけはアピールしておいた。完璧だ。

あとは本決まりの日を待つだけだ。

 

後日、僕は見事トランペットパートに決まった。努力が実ったのだ。バックグラウンドを固めておくことの有用性を学ぶことができた。

あの子はトロンボーンになったけど、僕はしっかりトランペットを頑張るぞ!

 

 

 

 

 

 

 

月日は流れ、高校受験を控えた頃、俺はまた別の子を好きになっていた。

その子にどこを受験するのか聞くと、地元の商業高校を受験するのだと言っていた。

特に希望する進路は無かったし、高校卒業後わざわざ大学へ進学してまで勉強をしようなどと思っていなかった俺は工業高校を受験しようとしていたが、冬休みの三者面談というクソギリギリのタイミングで希望進路を商業高校へと変更した。担任は地元にある普通科進学校を勧めてきたが、俺はもう勉強などしたくないのだ。

そこそこ勉強もしていたので、特に苦戦することもなく商業高校に合格した。

 

その子は地元にある普通科進学校に行った。